クマはなぜ人里に降りてくるのか?止まらないクマ出没と、日本熊森協会が見つめる”奥山の危機”とは?

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みなさんこんにちは!
なごみにゅーす管理人の、なごみです。

最近は減った気がするものの「またクマが人を襲った」「住宅街にクマが出没」というニュースを、何度も目にするようになりましたよね。

環境省の速報によると、2023年度(令和5年度)のクマによる人身被害は218人(死亡6人)と、統計開始以来最多ペースだったそうなのですが、さらに2025年度は10月末時点ですでに死亡12人と、過去最多だった年の2倍に達しています…!

テレビやネットだけ見ていると、「クマが突然、全国で暴れ出した?」という印象にも感じてしまいますが、本当にそうなのでしょうか?

この記事では、

  • いまクマ出没と人身被害がどうなっているのか

  • 国はどんな対策を取り始めているのか

  • 一般財団法人 日本熊森協会は、何を「問題の根っこ」と見ているのか

を、先日の第1弾記事より一歩踏み込んだ形で整理していきます。

※第1弾の記事をまだお読みでない方はこちらからどうぞ!

 

特集の第2回目だにゃ。
絡み合っている問題を深堀りしていきます!
この記事はこんな人におすすめ💡
・動物との共生を考えたい人
・熊に関する諸問題を真剣に考えたい人
・動物愛護について考えたい人
・様々な動物の実態に興味がある人
・自然環境について考えたい人

増え続けるクマ出没と人身被害

まずは現状のざっくりした「輪郭」を押さえておきましょう。

環境省がまとめた資料によれば、クマによる人身被害はここ10年ほどで増加傾向にあり、2023年度(令和5年度)の被害件数は1月末時点で197件(被害者218人・死亡6人)と、月別統計がある平成18年度以降で最多ペースになりました。

そして2025年度。TBSなど各種メディアの報道では、4〜10月の時点で死亡者が12人に達し、これまで最多だった年の2倍に増えたと伝えています。

また、

  • クマの出没件数が単純に激増している

  • 従来被害が多かった東北・北陸だけでなく、関東や近畿などにも広がりを見せる

  • 秋に入ってから死亡事故が相次ぐ

というのが、ここ最近に起きていることの大きな流れです。
そして、ニュースだけを追っていると、「クマがいきなり凶暴になった」ような印象を持ってしまいがちだと私は考えます。

しかし、実際には長い時間をかけて積み重なってきた変化の“結果”が、いま表面化しているのだと見る専門家も多くなっています。

国はどう見ている?「指定管理鳥獣」としてのクマ対策

クマの出没と被害がここまで深刻になっている中で、ついに国も大きな舵を切りました。

クマを「指定管理鳥獣」に

2024年4月、環境省は四国の個体群を除くクマ類(ツキノワグマ・ヒグマ)を、ニホンジカ・イノシシに続いて「指定管理鳥獣」に追加しました。

指定管理鳥獣と、国の対策

  • 鳥獣保護管理法に基づき、
    集中的かつ広域的に個体数や分布を管理する必要がある鳥獣として環境大臣が指定した種のこと。

これまではニホンジカとイノシシのみが対象でしたが、ついにクマ類もこれに加えられました。
(ちなみにツキノワグマに関しては、絶滅の危険性が高い四国の個体群は除外されています。)

指定管理鳥獣に追加するメリットとして、都道府県が行う集中的な捕獲や生息状況の調査などの対策事業に対して、国からの財政支援(交付金)が行えるようになり、より広域的・計画的な管理が可能になります。

政府が2025年に公表した「クマ被害対策施策パッケージ」では、

  • 出没情報・被害状況のモニタリング強化
    ⇒AIやドローンを活用した被害予測の精度向上なども含む。

  • 電気柵や防護柵などの被害防止
    ⇒特に農作物への執着が強いクマ対策として、電気柵の二重設置など「強固な侵入防止策」が奨励されている。

  • 人の日常生活圏に出たクマへの緊急銃猟
    ⇒2025年9月に施行された改正鳥獣保護管理法に基づき、地域住民の安全確保など一定の条件下で、市町村長の判断・指示により、人の日常生活圏に出没したクマ(やイノシシなど)に対して、特例的に銃猟(緊急銃猟)を可能とする仕組みが導入された。

  • 人材確保
    ⇒ 狩猟免許を持つ公務員である「ガバメントハンター」の確保・育成に対する財政支援、警察官OBや自衛官OBへの狩猟免許取得の奨励など。

などが一体的に進められようとしています。

ざっくり言えば、「出没も被害も増えているので、クマの数や分布を“国を挙げて本気で管理する”段階に入った」というのが、いまの国の基本スタンスです。

クマはなぜ山から降りてくるのか?複数の要因を整理

国の動きが本格化したことが分かりましたね。
では、そもそもなぜクマは人里に降りてくるのでしょうか。

ここを「クマの個体数が増えすぎたから」のひと言で済ませてしまうと、対策も「数を減らす」の一択になってしまいます。

クマ出没にはいくつもの要因が重なっていると言われているので、いったん大きく3つに分けて整理してみます。

 山のエサの「当たり年・はずれ年」

ツキノワグマやヒグマは、秋になると

  • ブナ

  • ミズナラ

  • コナラ

といったブナ科の木の実(いわゆるドングリ)を大量に食べて、冬眠のための脂肪を蓄えます。

ところが、これらの木は「豊作の年」と「ほとんど実らない年」が極端という特徴を持っており、
ブナやミズナラの実が大凶作だった年には、クマが広い範囲でエサを探し回り、人里に出るケースが多いことが過去の研究からも指摘されています。

※ブナ科の樹木は一斉に果実を実らせる(これが豊作の年にあたる)ことで、種子を食い尽くそうとする動物に対して、食べきれない量を一度に提供し「種の生存戦略を有利にしている」と考えられています。

環境省の資料でも「令和5年度は秋以降に人身被害が急増し、とくに10月の被害件数が過去最多となった」ことが示されており、一部の地域では堅果類の不作とも重なったと分析されています。

つまり、「その年の山の実り具合」という短期的な要因だけを見ても、クマ出没にはかなりの年ごとの“ブレ”があるのです。

 森林構造の変化と人工林化

もうひとつ、より長い時間軸での変化があります。

日本の森林の約4割は人工林で、その多くがスギ・ヒノキの針葉樹です。

  • 戦後の木材需要の高まりと「緑化」の名のもとに進められた拡大造林政策によって、本来ブナやナラなど広葉樹が育っていた森が伐採され、スギ・ヒノキの単一的な人工林に置き換えられたこと。

  • その後、木材価格の低迷や過疎化によって手入れがされず、暗く下草もほとんど生えない“緑の砂漠”のような森が広がったこと。

結果として、クマの大事なエサになる広葉樹や下層植生が減り、「山の奥まで行っても、十分なエサに出会えない場所」が増えてしまった、という指摘があります。

また、かつては薪炭林として人が手を入れていた里山も、エネルギー源が石油やガスに変わり里山利用がなくなった結果、管理放棄され、奥山から続く暗く鬱蒼とした森へと変貌しました。

この「暗い森」が奥山と人里を遮るバリアとならず、クマが人目を避けながら人里近くまで容易に移動できる“通り道”として機能しているという分析があります。

 人間側の環境の変化 “里の誘い”が増えている

クマにとっての世界は「山」だけではありません。人間側の環境も、大きく変わってきました。

  • 放置された柿の木やクリの木

  • 電気柵や防護柵の設置・管理が十分でない果樹園・家庭菜園

  • 食品を扱う施設の裏手やゴミステーションなど、人の食べ物の残りが集まりやすい場所

こうしたものは、クマにとって高カロリーで手軽な“ごちそう”を得やすい場所になってしまいます。クマは一度人里でこうした「ごちそう」の味を覚えると、山に戻ってもそれを忘れられず、翌年以降も繰り返し人里に出没する「人慣れ」や「市街地慣れ」を引き起こす最大の要因となります。

さらに、中山間地の過疎化や高齢化によって、山や畑の管理が行き届かなくなり、見守りの目が減って放置された果樹や畑が、クマを里に誘う“エサ場”になりやすくなっているという指摘もあります。

こうして様々な角度から見てみると、クマが人里に出る背景には、

  1. その年ごとのエサの豊凶(短期)

  2. 森林構造の変化や人工林化(長期)

  3. 里側の環境変化・過疎化・ライフスタイル(人間側)

などといった複数の要因が重なっていることが見えてきますね。

「奥山の危機」とは何か?日本熊森協会の見方

では、一般財団法人日本熊森協会は、この状況をどう見ているのでしょうか。

熊森協会は、クマの出没増加を「奥山水源の森の危機」という、より長期的な環境問題として捉え、単なる有害鳥獣駆除ではない根本的な対策を訴えています。

・人工林化と放置:
拡大造林によって広葉樹林が針葉樹人工林に変わり、その多くが手入れされずに暗く餌のない森(緑の砂漠)になった結果、クマの生息環境が劣化している。

・堅果類の不安定化:
気候変動やナラ枯れ(カシノナガキクイムシによる被害)などにより、ブナやミズナラなどのドングリの実りが不安定になり、クマが安定した食料を得られなくなっている。

・開発による生息圏の分断:
尾根筋や里山での無計画な開発(風力発電、大規模太陽光発電など)が、クマの移動経路を分断し、結果としてクマの生活圏そのものを縮小・圧迫している。

こうした要因によって、クマが奥山から追い出され、里周辺に移動・定着せざるを得なくなっている、というのが熊森協会の問題意識です。

熊森協会はクマを単なる「危険な動物」としてではなく、

水源の森をつくり、保つうえで重要な役割を持つ“森の象徴的な存在”

として捉えるべきで、「クマが棲めない森は、人にとっても危うい森」なのだというメッセージを発信しています。

※この「奥山のエサ不足」や「開発の影響」については、別の専門家から異論も出ており、客観性を高めるためにも次の第3弾記事で詳しく触れていきます。

日本熊森協会が訴える「捕殺偏重では解決しない」という問題意識

クマ出没が深刻化する中で、国は指定管理鳥獣指定や緊急銃猟の制度整備など、捕獲・駆除を含む対策を強化しています。

これに対して熊森協会は、「捕殺偏重では根本的な解決にならない」と強く訴えています。

熊森協会は、クマ被害対策パッケージ(2025年決定)で示された捕獲強化策に対し以下の点で懸念を表明し制度の見直しを求めています。

1.「危険鳥獣」などの名称見直し

主張:
クマやイノシシを「危険鳥獣」と呼ぶことは、住民や行政に「危険だから駆除すべき」という捕殺一辺倒のイメージを植え付け、共存を困難にするとして、名称の見直しを求めています。

背景:
協会は、クマを単なる「害獣」ではなく「森の象徴」と捉えており、この呼称の変更は、根本的な意識改革につながると考えています。

2.財政支援の重点の変更

主張:
市街地出没クマへの銃猟拡大(緊急銃猟)に対する財政支援や法整備を強化するだけでなく、被害防除・棲み分け対策(電気柵の整備、追い払い活動など)に対する財政支援を大幅に強化すべきであると訴えています。

理由:
根本的な被害を減らすには、人里にクマを誘引させない環境づくりと、棲み分けの努力が不可欠であると考えているためです。

3.奥山の天然林再生と対策への重点的な資源投入

主張:
長期的な解決策である奥山の広葉樹林(天然林)の再生と、人里での追い払い・電気柵整備といった非殺傷的な対策に対して、予算と人材を最優先で重点投入するよう要望しています。

対策の方向性:
クマの生息環境を改善することで、クマが山で餌を確保し、人里に出る必要性を減らすという原因療法を強く推しています。

熊森協会上記の内容で要望書を国に提出しました。

熊森協会は、「人命を軽んじてよい」などとはまったく言っておらず、人命の安全を確保することが大前提であるとした上で、『原因の部分』(奥山と里の環境)に手を付けないまま捕殺だけ増やしても、同じことが繰り返されるのではないか」

という問題意識をもっています。

私は、ここは非常に重要なポイントだと考えています。熊森協会をSNS上などで批判する声の中には、あたかも熊森協会が人命よりも熊の命を優先している、と言わんばかりの主張も散見されます。

いずれにせよ、きちんと事実を捉えて偏りのない情報発信に努めるべきです。

私も気を付けます。

熊森協会の提案 「棲み分けて共生」をどう実現する?

では、熊森協会が考える「棲み分けて共生」とは、具体的にどんな姿なのでしょうか?

大きく分けると短期対策と中長期対策があります。

短期対策:とにかく“クマを寄せつけない里”にする

まず最優先なのは、人身事故を減らすことです。
熊森協会も緊急要請や要望書の中で、人里におけるクマの誘引物を徹底的に排除することを求めています。

具体的には、

・誘引物の徹底除去:
残飯、生ゴミ、畑の残渣、そしてクマを強く誘引する放置されたカキやクリなどの果樹の剪定・伐採を最優先で実施すること。

・物理的防御:
集落や畑を囲む電気柵や防護柵の整備に対する国や自治体の支援を大幅に強化すること。

・緊急時の対応:
里周辺に居ついたクマに対しては、追い払いを基本としつつ、必要な場合はやむを得ない措置として捕獲・捕殺も現実的な対策として受け入れています。

といった、現実的な対策の強化を求めています。

つまり、

「クマを殺すな」ではなく「クマを寄せつけない里づくりに、もっと予算と知恵を割いてほしい

というニュアンスがあるのです。

中長期対策:緩衝帯と奥山の再生

そのうえで、熊森協会が重視しているのが中長期の“地ならし”です。

緩衝帯(クマが近づきにくいゾーン)を整える

  • 集落と奥山をつなぐ里山・農地を、「人が定期的に入り、見通しのよい空間」として維持すること(クマにとって居心地が悪い空間にする)

  • 草刈りや畑の手入れ、柿の木の剪定・伐採などを通じて、クマが隠れにくく、近づきにくい地形に整えていくこと

こうした緩衝帯づくりを支援する予算を国に求めています。

奥山の天然林再生

さらに奥山側では、

  • 放置人工林の間伐・皆伐を実施し光を入れる

  • ブナやミズナラなど、実のなる広葉樹の植樹や天然更新の促進

  • 尾根筋の無秩序な開発(大規模風力やメガソーラーなど)の抑制

を通じて、クマや他の野生動物がきちんと棲める水源の森を取り戻すことを目指しています。

そのため、熊森協会の中長期対策のイメージをひと言でまとめると、

クマを“ゼロ”にするのではなく、クマと人が近づきすぎない状態に戻す

という感じに近いと思います。

出典:https://www.youtube.com/watch?v=s2TpueHr5FE
チャンネル名:公益財団法人 社会貢献支援財団 様

↑ここで、改めて一般財団法人日本熊森協会の活動が分かる動画をご紹介します。
会長の室谷さんも「はじめは誤解されることもある」とおっしゃっていますが、見つめる観点はクマの背景にあるものなんですね。

奥山再生は、人の暮らしの“奥行き”を取り戻すことでもある

ここまで情報をつらつらと書いてきましたが、クマ問題は「クマか人か?」という単純な選択ではないことが見えてきます。

  • 山のエサの豊凶

  • 森林構造の変化(人工林化・里山の荒廃)

  • 里側の環境(過疎化・放置果樹・ゴミ)

  • 気候変動

こうした要因が絡み合った「人と森と野生動物の関係性そのものの問い直し」が、今まさに突き付けられているのかもしれません。

奥山の再生や緩衝帯づくりは単にクマのためだけでなく、

  • 山の水源を守る

  • 土砂災害のリスクを減らす

  • 地域の暮らしの安心感を取り戻す

といった、人の暮らしの“奥行き”を取り戻すことにもつながります。

まとめ クマを巡る二項対立の先へ

今回の記事では、

  • クマ出没と人身被害が増えている現状

  • 指定管理鳥獣制度など、国の基本的なスタンス

  • 日本熊森協会が見ている「奥山の危機」と、「捕殺偏重では解決しない」という問題意識

をざっくりと整理してみました。

とはいえ、ここで紹介した熊森協会の見方(奥山のエサ不足、開発の影響など)には、

  • 「ブナが不作だからクマが里に出る」という説明には限界があるのでは?

  • 個体数管理や捕獲の必要性をもっと重視すべきでは?

  • 熊森協会の緊急声明には論理矛盾があるのでは?

といった、他の研究者・実務者からの批判や疑問も出ていることがまた事実でもあります。

所感と第3弾の予告

ここまで読み進めていただき、本当にありがとうございました。
私自身も情報を集めたり記事を書く中でとても勉強になり、クマ問題は私たち自身の生活態度や意識を改めて問われるような、そんな根深いものだと感じられました。

次回の特集第3弾では

  • 日本熊森協会に対する主な批判・疑問

  • それに対する反論や、別の専門家の立場

  • 「クマを守るべき/駆除すべき」という二項対立を乗り越えるヒント

を、「どちらの味方をするか」ではなく「論点の地図を描く」イメージで整理していく予定です。

私は、皆さんがニュースでクマの話題を見るたびに、ただ不安になるだけでなく、

「この裏には、どんな変化や事情があるんだろう?」

と、ほんの少しでも想像してもらうきっかけを提供したいと思って、この特集記事を書いています。

記事の投稿もほんとに小さな一歩にすぎませんが、その小さな一歩が「クマも人も一緒に生きていける」未来につながっていくのだと、私は信じています。

 

山も森も、変化しているのにゃ。
一番変わらなきゃいけないのは私たちかもね。

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